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鋳造用アルミニウム合金の特徴と主な用途
- Publish :
- 2023.10.11
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(1)Al-Si系、Al-Mg系合金
この系の合金は非熱処理型の合金で、T6などの熱処理を施しても強度は高くなりません。伸び、靱性が高いことがこの合金系の特徴です。従って、強度はあまり必要としないが、万が一衝撃が加わっても折れずに変形でとどまることが必要な部品に使用されます。AC7A合金は上記の特性の他にアルマイト処理性も良好なためオートバイのブレーキレバーなどに用いられています。
(1)Al-Si系、Al-Mg系合金
この系の合金は非熱処理型の合金で、T6などの熱処理を施しても強度は高くなりません。伸び、靱性が高いことがこの合金系の特徴です。従って、強度はあまり必要としないが、万が一衝撃が加わっても折れずに変形でとどまることが必要な部品に使用されます。AC7A合金は上記の特性の他にアルマイト処理性も良好なためオートバイのブレーキレバーなどに用いられています。
(2)Al-Cu-Mg系合金
この系の合金は高温強度に優れるが、鋳造性が良くないためあまり使用されていません。数十年前に自動車の空冷エンジンのシリンダーヘッドに使用されたことがあります。
(3)Al-Si-Cu系合金
この系の合金は鋳造性、切削性が良く、熱処理を施すことで強度が高くなります。Cuを含有するため、高温での強度が高くなります。ただし、Cuを含有するため耐食性は劣ります。この合金系は熱がかかる自動車のエンジン、駆動部品等に用いられています。
(4)Al-Si-Mg系合金
この系の合金は鋳造性に優れ、伸び、靱性が高いことが特徴です。熱処理により強度が高くなりますが、Al-Si-Cu系合金よりも強度は劣ります。Cuを含有しないため耐食性に優れています。特にFe量を低く抑えたAC4CH合金は伸び、耐食性に優れることから鋳造製のディスクホイールに用いられています。
(5)Al-Si-Cu-Mg-Ni系合金
この系の合金は主にエンジンのピストンに用いられています。一般的にAC8A合金が用いられています。AC8A合金は11~13%のSiを含有しており、耐摩耗性に優れ、熱膨張係数が低いという特徴があります。また、高温での強度を確保するためにCuの他にNiが添加されています。
(6)過共晶Al-Si系合金
この系の合金は主に18%以上のSiを含有しており、凝固時に初晶Siが晶出します。初晶Siは非常に硬い晶出物であり、これにより耐摩耗性が飛躍的に向上します。
過去に米国レイノルズ社が開発したA390合金が知られています。この系の合金はSi量が多いため、他のアルミ合金に比べて熱膨張係数が小さくなります。この系の合金は溶解、鋳造時にP(リン)を添加しないと初晶Siが粗大化し、被削性の悪化や加工時の初晶Siの割れ、脱落が生じる場合があります。
耐摩耗性が良好なことから、鋳鉄製ライナーを使用しないオールアルミシリンダーブロックに用いられました。また、マニュアルトランスミッションのシフトフォークや、エアコンのコンプレッサー部品に用いられています。
AC9A、AC9BよりもSi量が少ない過共晶合金も開発されています。
アルミ鋳物 材料選定のポイント
新規のアルミニウム部品を開発する際の材料選定のポイントをまとめました。部品の必要特性に対して、下記のような材料を選定する必要があります。
(1)耐熱性が必要な部品
基本的にはCu、Niを含有する合金を選定します。ただし、前述したように、AC1B、AC5Aは鋳造性が悪いため鋳物材には適しません。
(2)伸び、靱性が必要な部品
アルミ鋳物合金で最も伸びが大きいのはAC7A合金です。この合金は特に塩水に対する耐食性が高く、海洋で使用される部品や船舶に用いられています。次に伸びが高く鋳造性に優れる合金としてAC3Aがあります。ただし、AC7A、AC3Aともに耐力が低いため注意が必要です。強度、伸び、鋳造性を考えるとAC4C、AC4CHなどのAl-Si-Mg系の合金が適切です。
(3)耐摩耗性が必要な部品
アルミニウム合金の耐摩耗性は硬さと言うよりは、Si含有量が大きく影響します。特に初晶Siが晶出する共晶または過共晶Si合金は耐摩耗性に優れています。ただし、鋳造時に初晶Siの微細化を行う必要があります。
(4)耐食性が必要な部品
アルミニウム合金の耐食性にはCuおよびFeの含有量が大きく影響します。これらはAlとの腐食電位差が大きく耐食性を低下させます。従って、Cuを含有せず、Fe量が低い合金(AC4CH)が適切です。ダイカスト合金は溶湯と金型の凝着を防止するためにFe含有量を高くしてあります。ADC12合金などはCuも含有するため耐食性は低くなります。
(5)熱伝導が必要な部品
アルミニウム合金の熱伝導度は純アルミが最も高く(220W/m・k)、SiやCu等の元素が添加されると熱伝導度は低下します。鋳物用合金の熱伝導度はおよそ100~150W/m・k)で、その中でもAC4C、AC4CH合金は熱伝導度が大きい合金になります。熱伝導度は調質状態(熱処理)によっても若干変化します。