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アルミの特性
Aluminum Properties

私たちの身近な製品から、社会の様々な分野にいたるまで活躍のフィールドを広げているアルミ。これは、アルミの持つ特性が、多くの用途や目的に合わせて上手く利用されているからに他なりません。
アルミのニーズは多様化・高度化し、今日では従来の特性にとどまらず、新たな機能を付加し、先端分野へ着実に展開しています。

アルミをあらわす5つのキーワード
5 Words

  1. 軽い

    アルミの比重は2.7。鉄の7.8や銅の8.9と比べると、約1/3の重さです。軽量化による性能向上が時代のニーズとなっている今、自動車、鉄道車両、航空機、船舶などの分野で多くのアルミが用いられています。

  2. 強い

    アルミは比強度(単位重量あたりの強度)が大きいため、輸送機器や建築物などの構造材料として使用されることが多いですが、純アルミの引張強度はあまり大きくありません。しかしマグネシウム、マンガン、銅、ケイ素、亜鉛などを添加し合金にすることや、熱処理を施したりすることで、強度を高めることができます。

  3. 再生しやすい

    「リサイクルの王様」とも言われるアルミ。その所以は、融点が低く、溶かす際にも少ないエネルギーで済むというアルミの特性にあります。温暖化防止のCO₂削減やリサイクルによる資源の有効利用に取り組む必要性が高まる中、アルミはこの「リサイクルしやすい」「環境にやさしい」という利点から、活躍の場を広げています。

  4. 加工性が高い

    様々な形状に成形することが可能なアルミ。紙のように薄い箔や、複雑形状の形材も製造可能なため、きわめて広い用途で使用されています。
    また、できあがった製品素材をさらに成形加工したり、製品表面に精密加工を施すことも比較的容易な上に、切削加工性にもすぐれております。

  5. 鋳造しやすい

    アルミは融点が低い、溶けた状態でも表面が酸化皮膜で覆われガスを吸収しにくい、湯流れがよいといった性質を持っているため、薄肉の鋳物や複雑な形状の鋳物をつくることができます。アルミ鋳造品はピストン、シリンダーブロック、ホイールなどの自動車部品、また、各種産業機械部品など幅広い分野で活用されています。

その他にも、アルミには「耐食性がよい」「電気を通しやすい」「磁気を帯びない」「熱を良く伝える」「低温に強い」といった特性もあります。

アルミ合金鋳物と鋳鉄の比較

アルミは鉄と比べて...

  • 低温に強い
  • 放熱性が良い
  • 耐食性が良い
  • 再生しやすい
  • 鋳造性が良い
  • 通電性が良い
  • 熱伝導性が良い
  • 軽い
  • 磁気を帯びない
  • 加工性が高い
金属 (合金)名AC4A-T6(合金)
金型鋳造*
AC4CH-T6(合金)
金型鋳造*
FC250(鉄)
比重2.682.687.87
切削時間111.8(倍)
引張強度240N/mm²以上250N/mm²以上250N/mm²以上
伸び2%以上5%以上
硬度約90HB約80HB241HB以下
X線検査不可
最小鋳抜きΦ5(Φ3)Φ5(Φ3)Φ5以上
耐食性T6処理で耐食性向上(耐食性材料あり/AC7A)錆びやすいため防錆材の塗布必要
アルマイト処理不可
使用例油圧バルブ 他自動車用ホイール
油圧バルブ
計量器
油圧バルブ 他
※ アルミ地金材質については、AC1からAC9まであり、それぞれに特性があります。

アルミ合金とは
Aluminum alloy

アルミのうち、純度99%以上のものは「純アルミ」、そして、種々の元素を添加し強度を高めるなど、性質を改善したものは「アルミ合金」と呼ばれています。 
アルミ合金は、製品用途やニーズに必要な性質により、板、はく、形材、管、棒、線および鍛造品に加工する圧延用合金と、鋳物やダイカストなど各種鋳造法に使用する鋳物用合金に大別され、鋳物用合金はさらに砂型・金型鋳物用合金とダイカスト用合金に分けられ、各種特性が異なります。
また、それぞれ非熱処理型合金と熱処理型合金として分類されます。非熱処理型合金は、圧延加工などの冷間加工によって、熱処理型合金は、焼入れや焼もどしなどの熱処理によって、所定の強度を得る合金です。

砂型・金型鋳物用合金

Al-Cu-Mg系合金(AC1B)
鋳物用アルミ合金の中で強靱性にすぐれた合金であり切削性がよく、電気伝導性にすぐれた合金です。架線用導電部品、自転車用部品、航空機用油圧部品などに使用されていますが、耐食性が劣るため腐食環境での使用は適していません。
Al-Cu-Si系合金(AC2A, AC2B)
Al-Cu-Mg合金よりもCuの添加量を減らし強靱性を若干犠牲にしても、Siを添加することにより鋳造性の改善を図った合金です。自動車用エンジン部品などに使用されています。
Al-Cu-Al-Cu-Ni-Mg系合金(AC5A)
高温での使用でも硬さを保持させようと改善した合金であり、耐食性は劣るが切削性や耐摩耗性にすぐれています。切削性と耐摩耗性に注目され、精密加工を要するしゅう動部品などに使用されています。
Al-Si系合金(AC3A)
Siだけを合金元素として添加したもので、鋳造性にすぐれています。強度は高くないが伸びは大きく、また、熱膨張係数が小さく、耐食性もよい合金です。強度はあまり必要とせず、薄肉で複雑な形状や模様を呈する製品に適しています。
Al-Si-Mg系合金(AC4A,AC4C,AC4CH)
Al-Si系合金のSi量を減らしMgを少量加えた合金で、すぐれた鋳造性を維持したまま機械的性質を改善した合金です。主な用途は、エンジン車両部品、船舶用部品、建設機械用部品などがあげられます。AC4CH合金は、AC4C合金の強靱性の向上を意図して不純物の含有を厳しく規制したものであり、自動車用ホイールなど保安的要求が高い部品に使用されています。
Al-Si-Cu系合金(AC4B)
この合金系は、Al-Si系合金のSi量を減らして、Cuを添加した合金であり、Cuを含有するため耐食性は劣りますが、鋳造性にすぐれ、強度も高い合金です。自動車用、電気機器用、産業機械用部品など広い分野で利用されています。
Al-Si-Cu-Mg系合金(AC4D)
Al-Si-Mg系合金のSi量を若干低くしてCuを添加した合金です。鋳造性としての引け特性に優れているため、耐圧性、耐熱性があります。主に、シリンダーブロックやクランクケースなどエンジン部品や油圧機器部品に使用されています。
Al-Si-Ni-Cu-Mg系合金(AC8A, AC8B, AC8C)
Al-Cu-Ni-Mg系合金のピストンとしての不十分な特性を改善するため、Cu量を半減させ、Si添加量を大幅に増やして熱膨張係数を小さくし、耐摩耗性を高めた剛性の高い合金です。エンジン用ピストンに使用されています。
Al-Si-Cu-Mg-Ni系合金(AC9A,AC9B)
Si量が最も多く、AC9A合金は23%Si、AC9B合金では19%Siを含有しています。AL-Si-Ni-Cu-Mg系合金よりもさらに熱膨張係数を小さくした合金であり、高い剛性と耐摩耗性があります。2サイクルエンジン用ピストンやディーゼルエンジン用ピストンなどに使用されています。
Al-Mg系合金(AC7A)
代表的な耐食性合金で強さも伸びも高く、切削性にすぐれています。しかし、合金の化学組成から熱処理によって強度を向上させることができません。また、溶湯は酸化やガスを吸収しやすいため鋳造性が悪いという欠点があります。主に、架線金具、船舶用品、建築金具、事務機器部品などに用いられています。

鋳造方法(砂型・金型・低圧・ダイカスト)
Casting method

砂型鋳造

珪砂と粘結材を混錬し成形した型に、溶融金属を流し込み成型する鋳造法で、はじまりは紀元前と、最も古くから行われている方法です。現代においても、機械部品をはじめとし、様々な砂型鋳物が作られています。

特徴

  • 大きな鋳物の成形が可能である。
  • 型作成コストが金型に比べ安価である。
  • 短時間の準備期間で作成することができる。

注意点

  • 凝固スピードが遅いため、微細な組織を得るのが難しく、金型鋳造などに比べ機械的性質が劣る。
  • 大量生産に適さない。

金型鋳造(重力金型鋳造)

鋳鉄や鋼材などの金型を用いる鋳造法です。溶湯の重量で鋳造するため、重力金型鋳造とも呼ばれています。

特徴

  • 砂型鋳造に比べ凝固速度が速く、結晶粒が微細となるため、機械的性質に優れた鋳物を得ることができる。
  • 金型を用いるため寸法精度が良く、鋳肌の良好な鋳物を作ることができる。
  • 熱処理を行う事で、機械的性質が向上する。

注意点

  • 砂型に比べ金型費用が高くつくため、費用効果を考えると、ある程度の生産数が必要となる。

普通ダイカスト鋳造

ダイカスト鋳造は、金型の中に溶融金属を高速・高圧で注入し成形する方法で、短時間での成形が可能です。製品の鋳肌が美しく、寸法精度も優れ、薄肉の鋳物にも適しています。ただし、高速で注入するため、空気や酸化物を巻き込みやすく、気孔ができやすくなります。

特徴

  • 短時間に製造でき、大量生産に適している。
  • 高圧で金型に注入するため、薄肉鋳物の生産が可能。
  • 寸法精度がよく、ニアネットシェイプ(最終形状に近い状態に仕上げること)が可能。

注意点

  • 高圧で射出されるため、酸化物や空気を巻き込みやすい。
  • 熱処理、溶接等の後工程が難しい。
  • 熱処理が可能な真空ダイカスト法もある。

鋳造方法比較表

鋳造方法砂型鋳造金型鋳造普通ダイカスト
形状限度有限度有複雑・肉薄可
内部形状CO₂中子・シェル中子使用可金型入子・シェル金型入子使用可
大きさ小〜大小〜中小〜大
寸法精度
品質引巣・焼巣有引巣・焼巣有空気巻込有
機械的性質高(※)
生産性悪い良い非常に良い
型製作費
製品単価
※ 熱処理を行うことで機械的性質が向上する。

当社では、アルミのリサイクル性を活かし、製造工程で発生する不要部分や欠損品を、溶解炉を用いて再度溶かすことで再利用しております。

セミナー受付中

アルミに関する基礎知識やご活用法などのセミナーを開催しています。